平の茶房が
できるまで

平の茶房

初めてこの物件に出会ったのは
二〇一八年十二月のこと。
たまたま通りかかった下祇園町の裏通りに
ポツリと佇んでいた古民家。
何年も人が住んでいる様子はなく、
ほとんど廃墟と化していた物件でしたが、
どこか愛らしい佇まいに
私たちはたちまちその魅力に惹かれました。

二〇二〇年二月。
十年以上は空き家だった築七十年以上の古民家を
私たち夫婦は購入しました。

二〇二〇年七月

2020年7月13日、リノベーション工事開始
2020年7月13日。古民家を購入してから5ヶ月が経過し、ようやくリノベーション工事が開始しました。
1階の北側の12畳程度のスペースが「平の茶房」として活用するスペースです。最初は家賃5万円で賃貸用の一室として改修予定でしたが紆余曲折あって「カフェ」として改修することとなりました。

着工初日は前オーナー様の残留物の処分。そして古民家の「解体」作業が始まります。
今では珍しい「土壁」の建物。改修後に再利用する間柱や壁を残しつつの「解体」は簡単では無かったですが、前オーナー様にも敬意を込めて、丁寧に「解体」しました。
約30坪の2階建ての古民家を「解体」するのに延べで7日間。古民家から発生した廃棄物は20トン以上です。

着工 九日目

2020年7月22日、建物の耐震補強
建物の「解体」が終われば、次は建物を現代の耐震補強に合わせて「補強」していきます。
そのまま再利用できる古民家の支柱は残しつつ、強度の弱い箇所には新たに木材を追加していきます。
この古民家は建築当時の建物に前のオーナー様が改修に改修を重ねたらしく、極端に劣化が激しく、崩壊寸前の箇所もありました(実際に工事の過程でその箇所は2階から崩れ落ちました)。

古民家の「趣」をそのままに残して、改修をしたかったのですが、予想以上に建物の劣化が激しく、この「補強」作業には多くの時間を費やすことになりました。

お陰様で建物の強度はかなり高くなったと思います。歩くたびに軋んでいた古民家の床板は全て剥がして、24mmの分厚い合板に差し変わりました。

着工 十六日目

2020年8月3日、外壁の改修
今思えば、この建物の奇妙な「門構え」に出会い、そして興味を抱いたのが、この古民家と私たちの物語の始まりでした。この「門構え」を自らの手で「解体」するというのは数奇な運命ですが、またここから新しい物語が始まると思えば、悪い気持ちはしません。

外壁の改修が始まったのが2020年8月3日で、その全てが完了したのが8月26日。
約140平米の外壁。最高気温は毎日で更新される過酷な炎天下での高所室外作業。延べ日数で10日間を要して、外壁の「補強」が無事に完了しました。

この後、外壁は「左官」「塗装」作業を経て完成を迎えます。

着工 三十四日目

2020年8月27日、室内の造作
外壁の改修作業が終われば、室内の「造作」作業です。

室内に内壁を立ち上げていきます。店舗は近隣住民様にご迷惑をおかけしないように内壁が厚い構造で設計されています。

また、店舗はコンクリートの土間部分を経て、和室空間に入室することになります。キッチンスペースから入口付近は全て土間打ち。
また正面玄関の建具は昭和初期を思わせるレトロな雰囲気を漂わせる特注の建具。
構想も含むと完成まで1ヶ月を要した特別な建具です。
私たちは平の茶房の新しい「門構え」として、この建具を迎え入れられたことを光栄に思います。

着工 三十八日目

2020年9月1日、外壁の左官と塗装
板張りした外壁の上にはモルタルを塗りつけていきます。いわゆる「左官」という作業です。
まず最初の「左官」作業は下地作り。ただの板張りの上にモルタルは定着しないので、板張りの上に下地となるラスという素材を貼り付けていきます。モルタル(=コンクリート)を外壁に塗りつけるのはその後です。

外壁前面にモルタルを塗り終えたら、次は「塗装」です。当物件では少しベージュかかった白色を外壁のカラーに選択しました。

基礎巾木と玄関付近の土間打ちを完了すれば、外壁改修の完成です。
改修前は少し気味の悪さを感じた古民家が新築と見間違えるような美しさに蘇ったと思います。

着工 五十八日目

2020年9月24日、仕上げ作業
建物は「解体」「補強」「造作」を終えると、最後は「仕上げ」の作業に入ります。

内壁にはクロスを貼り付けていきます。平の茶房では壁面にプロジェクターで映像を投影するので、カラーは白を選択。古民家としての趣を残しておきたかったので、天井は木目調にしました。

お手洗いは淡い光量が特徴的な和空間のデザインにしました。

床に畳を敷いて、キッチンに設備を設置すれば店舗スペースの改修は完了です。

リノベーション工事を終えて

着工69日目
私たちが購入した古民家は2020年10月7日、リノベーションを完了しました。着工が始まったのが7月13日なので物件の改修に約3ヶ月間、延べで69日間を要しました。完成にたどり着くまでの道のりは決して平坦ではありませんでしたが、とても満足がいく素晴らしい改修が出来たと思っております。私もこのリノベーションにスタッフとして参加できた事を誇りに思います。そしてこのプロジェクトに関わっていただいた全てのスタッフの皆様に感謝と敬意を。スタッフの皆様の多大すぎる貢献は私の記憶と改修した物件、そしてこのブログに確かに刻まれています。
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